2009年1月4日

科学技術の功罪

科学技術の功罪

科学技術立国、日本

これは現在よく耳にするフレーズだと思います。

天然資源の獲得を自国の環境からはまかなえず、農業もどんどん縮小させてきてしまった日本の武器はやはり科学技術。科学技術の進展が多くの利益・希望を生み出すとともに他国との良好な関係を築く切り札である。(エネルギー源の石油や主要原料の大豆・トウモロコシなどはほぼ全てを輸入に頼る現状と世界に誇る日本製品の質の高さと技術力を背景にした日本の戦略)


これが私の解釈ですが(間違っているかもしれません)、みなさんはどうお考えでしょうか?

日本にいた頃を思い出すと、テレビでは車・ケータイ・テレビなどのCMがかなり多く流れていた気がします。ポータブルのゲーム機(ニンテンドーDSなど)や音楽再生機(iPodなど)も新しいものが次々登場し、冷蔵庫や洗濯機に加えパソコンやケータイなど、生活になくてはならない電気製品の数はかなり増えた気がします。生活には電気製品が溢れ、停電になった時の生活が日本では考えられません。


私たちの生活を取り囲む科学技術は私たちの生活を便利にし、時に新しい価値観を生み出し私たちの生活を豊かにする

2007年頃の私は「上記のような事実が完全に私たちの常識になっており、科学技術の負の側面が省みられることがない」ような気がしていました。ともすれば「科学技術至上主義」という言い方が当てはまりそ
うな現在の日本での生活の側面も考えてみたいと思い、途上国に住みたいという思いが強まりました。


そして日本にいるときに考えていた科学技術の負の側面とは

科学技術の進歩は地球環境の悪化や天然資源の枯渇の速度を大きくし、人間の世代間格差を大きくしているのかもしれない。(科学技術によって生み出される製品の流れとそれに伴う資源の搾取は大量消費社会と地球環境問題の到来に寄与した部分がある)

科学技術の進歩という道具はそれを操れる先進国の人々とそれを操る基盤を持たない開発途上国の人々の間の格差を保存することを助けているのかもしれない。

これから先、科学技術の進歩が進めば、人間にとって取り返しのつかない「何か」が生み出されるのではないか(特に生命科学の分野など)

知らず知らずのうちに科学技術に飲まれ、本来の幸せが妨害されているのでないか(ケータイやインターネット通信でコミュニケーションの方法が増え便利になった反面、本来の会話によるコミュニケーションがおろそかになり、心が満たされない。など)

というものでした。そして

現在の経済の流れの中では、消費者が必要か必要でないかに関わらず、どんどんと新製品を生み出し、生産者側からニーズを創出し、販売し続けなければいけないのではないか

ということを考えるようになりました。
もしこれが本当だとすればもう負の側面に気を配っている暇はありません。日本経済存続のためにはとにかく研究開発を急いで新しい製品を世に送り出さなければならないのかもしれません。

こんな風に当時の私は科学技術の在り方に対して少々否定的な見方を持っていました。
たぶんそれは私が「新しい製品を買いたい!」という欲求があまりないため、そのように思えてしまったのかもしれません。(テレビはブラウン管でもよいと思っているし、ケータイでテレビが見れなくてもいいと思っているし、ポータブルMUSICプレイヤーも買ったことがありません。などなど)


しかしタンザニアに来て実際に生活をし、どう感じたかと言うと、、、



科学技術の成果は必ず多くの人々を幸せにするという側面を持っている

現在の科学技術の進歩は後世の人々にも良いものとして利用される可能性は大いにある

先進国の人がもたらした科学技術の成果により途上国の人々も確実に幸せになっている。そしてそれは自分が想像しているよりもずっと多くの人々を幸せにしている。

自分も科学技術の恩恵なしには生きていけない。(恩恵を無限に受けている)

などがその応えです。

ここタンザニアで走っている車のほとんどは日本の会社製のものです。TOYOTA、ISUZU、NISSAN、MITSUBISHI、などなど。田舎ではこれらの車は本当にオンボロでおそらく日本で廃車になったものを持ってきたんだろうという感じです。(どういう取引の末にタンザニアに入ってくるのかはわかりませんが)排気ガスも本当に汚くおそらくやばいです。でも日本では考えられないくらいのそんなオンボロでもここの多くの人々を確実に幸せにしています。

仕事や学校が休みになったので里帰りする人や生徒を運ぶバス
病気になった村人を町の病院まで搬送する車
各地に食料・物資を運んでいるトラック

これらの重要な任務を背負い、それらの車はタンザニアに到着したのです。

もしそれらの車がなかったら里帰りの喜びも、病院に行ける安心も、物が地方まで行き渡った後の人々の喜びも、なかったのかもしれません。
そう考えると日本の自動車産業がもたらした幸せの大きさは無限に近いものに思えてきます。


私の住んでいるようなタンザニアの僻地でも携帯電話の電波塔があり、ケータイが使用できます。裕福な村人ならみんな普通にケータイを持っています。

そして私も!

任地でケータイが使えることがどれだけ大きいことかに対しては疑いの余地がありません。

病気になったとき、その他の緊急事態時に他の隊員や事務所に電話をすることができるという安心
任地にいながらにして日本にいる家族や恋人、友人と会話ができる喜び

携帯電話がこんなに意味の大きい道具だったことを日本にいた頃の私は気づくことが出来ませんでした。そして科学技術を否定的な目で見ていた自分自身こそが誰よりも大きな恩恵を受け取っていたことに気づきました。自分の浅はかさや傲慢さに恥ずかしくなりました。


現在タンザニアにいる専門家の方から聞いた話では
「昔ある途上国で魚の流通に関して、漁師が大きな損失を負わされていた。それは漁師と消費者の間で取引をする仲買人が自分の儲けを増やすために不当な取引を漁師に強いていたからだ。漁師は市場の情報を持たないから従わざるを得ない。しかし携帯電話が普及して漁師が市場の正確な情報を得られるようになってその問題は解消されたそうだ。」
という事実もあるそうです。

このような話を聞いたとき、科学技術がもたらす恩恵の大きさは私の想像をはるかに超えている。ということを認識しました。

科学技術の進展がもたらす成果をこんなちっぽけな人間である私に否定できるわけがないということをはっきりと自覚しました。


きっと科学技術に限らず全てのものには良い側面と悪い側面があるのだと思います。
そしてこの世に存在している以上そのモノには大きな良い側面があるはずなのです。
たぶん大切なことは悪い側面をどう殺すか、つまりそのモノの活用の仕方ではないかと思うのです。

例えば、形ある製品については
生産者はその製品のライフサイクルにもっと気を配ってモノをつくる
消費者はその製品の必要性を吟味して消費活動をする
途上国の人々と製品を取引するときは公正な取引をする


これらのことを意識して実行していけば、日本人としてより良く科学技術の成果を享受できるのではないでしょうか?
いろいろな科学技術を操り、多くの幸せを世界にもたらしてきた日本の科学技術がもっと輝くためには、きっといままで以上の「気配り」が必要なのだと思います。その気配りはしばしば目の前の損失を意味します。なのでバランスを取りながら出来る限りでいいと思うのです。しかしその気配りが長い目で見たとき、大きな利益につながると思うのです。
そしてこれから科学技術の進展はさらに専門性が高まり、スケールの大きいものになっていくと思われます。それに伴い、新しい科学技術の持つ良い側面も悪い側面もよりスケールの大きいものになり、それらが世界にどのように影響を与えるのかも予想しづらくなるような気がします。我々も「科学技術のことはわからないから科学者に100%任せきりでいいや」という態度をやめ、関心をなるべく持つように心がけたほうがよいのではないかと思うのです。

「この科学技術はどのように役に立つのか、どのような負の側面があるだろうか?」

最後に、、、私の大学時代の大親友で今春から電器メーカーで研究開発のお仕事に携わることが決まった彼が私に漏らした一言を紹介させてください。彼はテレビなどの開発に携わるそうです。

仕事に就く前からこんなこというのはあれだけど
世界に目を向けると、自分はテレビなんか作ってていいのだろうか
って思うね。

私は彼は本当に良い仕事をして、素晴らしいテレビを作って、最終的に世界の人々をたくさん幸せにする研究者・技術者になると確信しています。世界に目を向けるその「気配り」があれば「鬼に金棒」だと私は思います。彼を尊敬すると同時に、彼のようなステキな友人に恵まれた私はとっても幸せだなと思います。


科学技術の成果にただひたすら感謝し続ける日々です
こうやってブログができるのもインターネット技術の誕生にご尽力された数え切れないくらい多くの人々のお陰なのだと強く実感しています。

この投稿を書くに至るまでに、本当に多くの人々と科学技術についての話をしました。皆さんが本当に建設的に話をしてくださり、私に多くのヒント・アドバイスそして勇気をくれました。
本当にありがとうございました!これからも私とたくさん話をしてやってください!

2009年1月3日

4 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

小論文のテーマが
科学技術の功罪
ということでインターネットを使って調べていたときに
このサイトをみつけました。
読んでみて小澤さんの考え方がすごく素敵だな、と思いおもわずコメントしてしまいました^^♪

匿名 さんのコメント...

私も同じく、科学技術の功罪が小論のテーマでした。内容もすごくすばらしく、参考にもなりました。本当私は恵まれている国に住んでいるんですね。

だいすけ さんのコメント...

Hidekiさん
ブログを拝見させて頂きました。私が現在抱いている疑問に対して、大変参考になる体験が描写されていました。有難うございます。
自分もタンザニアの雰囲気を経験してみたいなぁ。

Hideki Ozawa さんのコメント...

匿名様

わざわざコメントを下さり、本当にありがとうございます!
読んでいただけただけでも大変に光栄です。

今後とも科学技術の動向をお互いに注視して行きましょう!


だいすけ様

わざわざコメントを下さり、誠にありがとうございます。
参考になった点が少しでもあったなら、幸いです。

タンザニアは本当に素晴らしい国で、人々、文化、自然、どれをとっても世界に誇れる国だと私は考えております。

本当にありがとうございました。