2009年7月19日

タンザニアにおける部族・民族の考え方

部族・民族の考え方

日本にいた頃、アフリカに関する記事を読んだり、映画を見たりしてアフリカには「部族・民族」という社会を構成する特有の要素がある。と感じていました。

日本にいた頃に「メディアを通して」見えていたアフリカの姿からは、すくなくとも私はそのように感じていました。

例えば


アフリカの国々は植民地支配の影響で国が分断され、言語・習慣などを一にする民族同士が集まって国を形成しているわけではないので、言語・文化などを基盤とした連帯感を生むのが難しい とか

英語やフランス語など植民地時代の宗主国の言語が公用語となっている国では教育を受けられなかった人は自分の部族語しかしゃべれないので、他の部族から来た人と意思疎通を図るのが難しい とか

1994年のルワンダで起きた大量虐殺(民族浄化)や2007年のケニア大統領選の際に起きた暴動など政治の世界にはびこる極端な特定民族優遇や民族差別が原因で、民族間に誤解や深い傷が残っている


などです。


しかしここタンザニアに1年以上暮らしてみて、上記のような「部族・民族」をとりまく複雑な問題は感じられません。


アフリカの他の国では問題なのかもしれません。
私はまだまだタンザニアの状況に関する観察が足りないのでそう思うかもしれません。
もしかしたら私がまだ知らない問題が潜んでいるのかもしれません。



しかし私にはここタンザニアでの「部族・民族」をめぐる人々の見方・観点について悪いイメージがありません。
むしろ日本人がお互いに「出身県」を言い合ってお互いの郷土について情報を交換して興味深く感じているのに似ているとさえ思います。


上述のような先入観から、私は最初は部族について人に尋ねることはあまりよくないことなのかなと思っていました。しかし、いろいろな人と話をする中で、そうではないと分かってからは
「あなたの部族は何ですか?」
と聞くことも多いです。

多くの人は喜んで私に教えてくれ、

「私の部族のこと知ってる?聞いたことある?」

と逆に聞いてきたりします。

そこで私はどこの地域にはどういう部族の人が多く住んでいるという情報をなるべく覚えるようにしています!
その情報をもとに

「ああ、○○族ってことはあなたは○○出身ですか?」

って尋ねてみるとかなり喜ばれます!

「そうだよ、よく知ってるね!!」



みんな基本的には自分の部族が好きなので、会話は弾みます。
自分のオリジナルを大切にしたいという気持ちが感じられてとっても共感できます。


以前に少し書かせてもらったように、私の住む村は「マクア族」がほとんどを占め、私も少しはマクア語を覚えたので最近は冗談で

「私はマクア族でルクレディ村出身です」

と言ったりしています!

「ほんとか!?じゃあマクア語しゃべってみろ!?」

って返された時にマクア語をしゃべるとビックリした後に大笑いで

「確かにお前はマクア人だな」

って言ってくれたりします。


政治の世界に「政策決定者による地元優遇」があることは行き過ぎたものでなければ一概に悪いことではないと思いますしそれは日本にも存在することだと思います。


こんな感じで私にとっては、タンザニアには「部族・民族」をめぐる悪いイメージがありません。

タンザニアには100を超える部族が存在するそうです。
部族をめぐる紛争・暴動が起きずに独立以来、平和を保っているタンザニア。


その要因として言われているのは

全国民がスワヒリ語という共通言語をしゃべれる(初代大統領ニエレレ氏の政策に基づくそうです)

部族の数が非常に多く、また突出した人口を持つ部族もないため、支配的部族が生まれず部族間均衡がうまく取れている。

などです。

また私が思うもうひとつの要因

タンザニア人の持つ「違いを受け入れ認めようという寛容の気質」

です。

これについてはまた書く機会があったら書こうと思います。


私も自分に余裕がなくなると、自分の価値観と違うものを思慮もないままに否定したりしてしまいますが、まずは一旦落ち着いて考え、寛容の態度で向き合いたい。そう思います。


タンザニアに来て学んだ大切なことの一つだと思います。


2009年7月19日

タンザニアグルメ クンビクンビ

ちょっと変わった食べ物を紹介します!!

スワヒリ語:kumbikumbi(クンビクンビ)
日本語訳:羽根の生えたアリ

アリ!?

そうです、アリです。
これ食べます!!

私も何度か食べたことがありますがけっこうおいしいです☆


これがクンビクンビと呼ばれるアリ。けっこう大きいです。暗くなると電灯の下に集まるので、捕まえるのは簡単なんだとか。


煎り具合を確認!近所のお父さんALOBAT。PETHI(ペティ)のお父さん



近所の子供、LEITHO(レイト、中央)とPETHI(ペティ、右)


調理法は油で揚げるか、鍋やパンで炒めるかの2通りみたいです。主食のウガリと一緒に食べます!

このクンビクンビ、タンザニアで広く食べられているようで、首都で都会っ子のタンザニア人と話してもみんなそんなに驚きません。


2009年7月19日

村の風景 沼の周辺

私の住んでいる村の風景の1つを紹介します!

なんと呼べばいいんでしょうか!?
池?沼?

私の住んでいる家から徒歩5分くらいのところにあります!
そこはもう草原というか野原、人間の手がほとんど加わっていないところです


池の手前の道



この池は私の住む村の人々にとってはなくてはならないものです。
毎日この池の水を汲みに村人がやってきます。


水を入れるタンクを自転車にくくりつけて運ぶ人、バケツやタンクを頭に乗せて運ぶ人。
家と池の往復はとっても大変な力仕事だと思われますが、村人はそれを毎日行っています。



池の水を汲みに来ている村人

水を汲んでいる子どもたち


また池の水は家に持ち帰るだけでなく、池のまわりで使われます!

その目的は

洗濯と入浴

です!


池の周りではみんな洗濯をしています!!
服をたくさん詰めたバケツを持った子供に出会うことがよくありますが、例外なく

「池に洗濯をしに行くんだよ」

って答えてくれます!


池の周りで洗濯をする子供、生徒


洗った服は草の上に置いて干すのがタンザニア村流。陽が垂直に当たるので早く乾く!という説を宇野くんが言っていました。確かに!!!


池の周りの茂みでは入浴をしている人もいます。ほとんどは男の子(こども)だとおもいますが。

一回ケッコウいい歳の若者が茂みの中ではなく、見えるところで体を洗っていてビックリしましたが(焦)
空のバケツと石鹸を持って歩いている男の子を夕方見かけることができます!

現在の日本ではなかなか見られないこの家の周りの光景は

人間のライフスタイルは状況に応じてここまで違うのか

ということを考えさせてくれます。


2009年7月19日

化学実験の授業(その2)

ですが問題は「水」です。

理想的な化学実験を行うには、水道設備(実験器具を十分に洗うため)と蒸留水(正確な溶液を作るため)が必要ですがこのどちらも存在しません。

村には何箇所か水道があり、現在はそこから水が出るので(ただし有料)器具洗浄のための水はそこの水道から調達しました。今回は合計で200Lの水をバケツに取り、実験室まで運びました!

また溶液をつくるための水には雨水を使用しました。
うちの村の水道の水は様々なイオンが高濃度で存在するのか、溶液を作ろうとすると白色沈殿ができたりするので適切ではないと判断しました。かわりに学校所有のタンクに貯めてあった雨水をつかうことにしました。今度はおかしな沈澱もできず、水道水よりは適当であると判断しました。


タンクから水をくみ上げる生徒(名前は左の生徒がJUMA、右の生徒がRAJABU)


実験は3日計画で行いました!

1日目は放課後に生徒にバケツ持参であつまってもらい、水を調達(水道のある場所→実験室)。そして実験室を清掃

2日目は放課後に生徒に集まってもらい全員で使うべき実験器具を洗浄(次の日までには乾く)。その後私は溶液を用意。


実験器具を洗浄している生徒たち

ビーカーを洗っています


そして3日目に実験決行です。

ビュレットを読む


熱心に実験中


実験それ自体について言うと,,得られた実験結果は決して良いものではありませんでした

使った薬品が古くて変質していた?
器具の洗浄が不適切だった?
溶液の用意に使った雨水が不適切だった?

など考えられる原因はたくさんあります。


生徒に実験結果に対する満足感を与えることができず、中途半端な実験の授業をしてしまったことは自分の責任だと思います。


蒸留水はバッテリーや工業用に使うものが町(マサシ)の工具屋さんに行けば売っているので、実験用に大量に入手できないかなと思っています。大量に買うとなると費用の問題があるのですが、10月に行われる国家試験本番までには町から蒸留水を手に入れたいと思っています。


しかし生徒には、

あらかじめ行った「酸と塩基の中和の概念と中和滴定実験の関連」や、
「実験のやり方、溶液濃度計算の仕方の実際」

などを学んでもらえたので実験授業をやってよかったなと思っています。

さまざまな場面で思うことですが、学校での教師という仕事を通して私自身がいろいろ勉強になっています。

協力してくれた生徒に感謝!


2009年7月19日

化学実験の授業

化学実験の授業

タンザニアの中等教育のカリキュラムにも日本と同じように実験があります。

しかし、タンザニアのすごいところは生徒の学歴・進学に関わる「国家試験」の中に「実験」科目があることです。

まだ書いていなかったと思うので書きますと(遅れてすみません)
タンザニアの教育は「国家試験」による評価に大きく依存しています。

小学校(7年間)
中等学校(Ordinary-Level 4年間、中学校に相当)
中等学校(Advanced-Level 2年間、高校に相当)
大学

という流れの中では、次の段階に進むためには卒業年次に受ける「国家試験」が大きくものをいいます。


小学校教育(7年間)を終えたことを証明するのは7年生の最後に受ける「国家試験」の結果です。
またこの国家試験の結果が良ければ国が指定した特別な中等学校(Ordinary-Level 4年間)に進学できたりします。
この試験で「不合格」の評価をとるといくら7年間通ったとしても「小学校卒業者」とみなされません。

そうなんです。ここでは

「国家試験」=「卒業資格試験」+「進学のための入学試験」

という2つの役割があるのです。

O-levelの最後に受ける国家試験は「O-level卒業資格試験」+「A-levelへ進学のための入学試験」
A-levelの最後に受ける国家試験は「A-level卒業資格試験」+「大学へ進学のための入学試験」

といった感じです。

私が教えているのはO-levelの生徒ですが、4年生で受ける国家試験で「不合格」をとると、せっかく4年間通っても「O-level卒業証明」をもらえません。学歴は小学校卒業になってしまいます。


その国家試験に「実験」という科目があります。
私の教えるO-levelでは「物理」「化学」「生物」の3科目が理科として存在しますがこれら3つの各科目につき実験科目が科せられます!
理系の生徒は理科3科目すべてを取るので、「普通の筆記」と「実験」で合計6科目の試験を受けなければなりません。
「物理」「物理実験」「化学」「化学実験」「生物」「生物実験」の6つです。


実験室を持たない学校に通っている生徒はどーするのか?というと

各「実験」科目に「実験(代替試験)」というものが用意されていて、それを受験します。
これは実験に特化した問題や、まるで実験を進めているかのようなシミュレーション問題ばかりが掲載されている筆記問題です。

「知識を実際に応用できる生徒を育てよう」

という理念のもとにこの仕組みになっているようです。


生徒にとっては幸いなことに、科せられる実験の内容は毎年ほぼ同一であり、過去の問題を見て練習をしておけば十分に対処可能なものです

例えば「化学実験」については毎年

中和滴定(酸と塩基の中和反応を用いて、濃度決定などを行う)
系統分析による化合物の同定(未知の化合物が何なのか実験により決定する)

が科せられます。

私の配属先の学校は立派な実験室があるので(アフリカ開発銀行の援助で建設されたそうです)
実験の授業・国家試験の実験科目を行うことが可能です。実験器具もしっかりしたものが相当数存在します。

私のいる学校には化学の正規教員がいないので、私は数学の他に化学の授業についても関わることが求められていました。

去年は本格的に授業を行うことはできませんでしたが、今年の新学期からは本格的に化学の授業も行っています。



私の学校の化学実験室



私が赴任した時は実験室の管理・使用は行われておらず、実験器具は乱雑にしまわれ埃をかぶった状態でした。
また実験室は「机・イス不足を補うために」普通の教室のように使われていました。

去年まずは実験器具の洗浄・整理整頓を行いました。


洗浄、整理した後のフラスコ、ホールピペット


試験管


そして今年は実験の授業も行ってみようということで、国家試験の問題にでる「中和滴定」の実験を4月にやってみました。


薬品は意外といろいろなものがそろっているので基本的な実験なら問題なしです。タンザニア南東部ではそんなに簡単に手に入るわけでもなく、値段も高価ですがうちの学校にあれだけの薬品があるのにはかなりびっくりです。



化学薬品(うちの学校の実験室内)

その2へ続く